希釈剤・溶剤の種類、性質及び用途
1.希釈剤の種類、性質及び用途
希釈剤はシンナーと称し、塗料を塗装するときの粘度を調整して塗りやすくするために用いられ
る他、塗装用機器及び用具類の洗浄等にも用いられる。
又、塗料の種類・塗装法によってシンナーの種類も変わってくるため、成分も種々の溶剤を種々
の割合で混合し、使う塗料の種類に応じてバランスよく配合してその目的に応じている。
溶剤は、それぞれ蒸発速度が違うため、四季の変化に応じ夏型・冬型と分けて使うこともある。
(1) 塗料用シンナー
ミネラルスピリットを主体としたうすめ液で主に油性塗料類に用いられ、トルエンやキシレンを加え
たものは、合成樹脂調合ペイントやフタル酸樹脂エナメル等に用いられている。
蒸発速度は、他のシンナーに比べ遅く、溶解力も劣る。
(2) 合成樹脂塗料用シンナー
合成樹脂塗料用シンナーは合成樹脂の種類が多く、溶剤に対する溶解性も異なっているので、
それぞれの合成樹脂に適合した溶剤を配合したシンナーがつくられている。
一般に合成樹脂塗料用シンナーはキシレン・トルエンを主体とし、樹脂の種類に応じてエステル
系、ケトン系等の溶解力の強い溶剤を適宜、配合している。
(3) ラッカーシンナー
トルエンを主体としてエステル系、ケトン系、アルコール系、エーテル系等の溶剤を適宜組合せ、
ラッカーの塗膜主要素であるニトロセルロースと樹脂の両者の溶解力を持たせている。
ラッカーのような蒸発乾燥形の塗料は溶剤の溶解力と蒸発速度との微妙なバランスが重要で
あり、白化等の発生を防止し正常な塗膜を得るための大切なポイントである。
ラッカーエナメルは塗膜主要素の関係で他の塗料に比べて粘度が高く、また吹付け塗装をする
ため、同量前後のシンナーが必要で塗料中、最も使用量が多い。
又、湿気の多い場所で塗装する場合に、白化を防止するため高沸点溶剤を多量に配合し、
蒸発を遅くしたリターダやアクリルラッカー用のシンナー等も別につくられている。
| ラッカーシンナーに使用される主な溶剤 | ||||
| 溶剤名 | 種別 | 分類 | 沸点 | 特性 |
| 酢酸エチル | エステル類 | 真溶剤 | 77℃ | 快香を有し、最も普通に 用いられるラッカー溶剤。 |
| 酢酸イソブチル | 117℃ | |||
| 酢酸ブチル | 126℃ | |||
| セロソルブアセテート | 156℃ | リターダとして使用。 | ||
| メトキシアセテート | 171℃ | |||
| アセトン | ケトン類 | 56℃ | 溶解力が強い。 蒸発が早く、臭気が強い。 |
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| メチルエチルケトン | 80℃ | |||
| メチルイソブチルケトン | 116℃ | |||
| シクロヘキサノン | 156℃ | リターダとして使用。 | ||
| DAA | 168℃ | |||
| メトキシブタノール | エーテル類 | 160℃ | ||
| ブチルセロソルブ | 170℃ | |||
| メチルメトキシブタノール | 174℃ | |||
| メタノール | アルコール類 | 助溶剤 | 65℃ | 粘度を下げ、溶解を助ける。 |
| イソプロピルアルコール | 82℃ | |||
| イソブタノール | 108℃ | |||
| Nブタノール | 118℃ | |||
| トルオール | 芳香族 炭化水素類 |
希釈剤 | 111℃ | 希釈性能が大きい。 |
| キシロール | 140℃ | |||
(4) アクリル樹脂塗料用シンナー
アクリル樹脂塗料は、次のように分類されます。
| アクリル樹脂塗料 | 蒸発乾燥型 | (1)非変性 |
| (2)ビニール樹脂変性 | ||
| (3)ニトロセルロース変性 | ||
| (4)セルロース・アセテート・ブチレート変性 | ||
| (5)アルキット変性 | ||
| 焼付乾燥型 | (1)架橋基を有する共重合体 | |
| (2)アクリル樹脂+メラミン樹脂 | ||
| (3)アクリル樹脂+エポキシ樹脂 |
| 使用する溶剤 | ||
| アクリル樹脂塗料の種類 | 使 用 す る 溶 剤 | |
| 蒸発乾燥型 | (1)非変性 | |
| (2)ビニール樹脂変性 | ||
| (3)ニトロセルロース変性 | ||
| (4)セルロース・アセテート・ブチレート変性 | ||
| (5)アルキット変性 | ||
| 焼付乾燥型 | (1)架橋基を有する共重合体 | |
| (2)アクリル樹脂+メラミン樹脂 | ||
| (3)アクリル樹脂+エポキシ樹脂 | ||
(5) エポキシ樹脂塗料用シンナー
エポキシ樹脂塗料は、次のように分類されます。
a).常温乾燥型
@.一液形エポキシ樹脂塗料
エポキシ樹脂に乾燥剤(亜麻煮油酸、脱水ひまし油酸)を添加したもの。
(エポキシアミン又は、ポリアミド塗料、タールエポキシ塗料)
シンナーは一般に芳香族炭化水素系(キシロール等)を使用する。
| 使用する溶剤 | |
| エポキシ樹脂塗料の種類 | 使 用 す る 溶 剤 |
| エポキシアミン又はポリアミド塗料 | アルコール、ケトン、エステル、グリコールエーテル、 芳香族炭化水素系の混合物 |
| タールエポキシ樹脂塗料 | アルコール、芳香族炭化水素系の混合物 |
A.二液形エポキシ樹脂塗料
常温乾燥用にはエチレンジアミン又は、トリエチレンジアミンを溶剤に溶かしたものを硬化剤
として塗装の前にエポキシ樹脂塗料に加える。
(エポキシイソシアネート樹脂塗料)
| 使用する溶剤 | |
| エポキシ樹脂塗料の種類 | 使 用 す る 溶 剤 |
| エポキシイソシアネート樹脂塗料 | ケトン、エステル、芳香族炭化水素系の混合物 |
b).焼付乾燥型
トリエチレンジアミンを硬化剤として使用する塗料。
| 使用する溶剤 | |||
| エポキシ樹脂塗料の種類 | 使 用 す る 溶 剤 | 焼付温度 | 焼付時間 |
| エポキシ樹脂と フェノール樹脂 |
アルコール、ケトン、エステル、グリコールエーテル、 芳香族炭化水素系の混合物 |
170〜 200℃ |
30〜40分 |
| エポキシ樹脂と アミン樹脂 |
アルコール、ケトン、エステル、 芳香族炭化水素系の混合物 |
150℃ | 20〜30分 |
| エポキシ樹脂、 アミン樹脂、 アルキッド樹脂 |
アルコール、エステル、 芳香族炭化水素系の混合物 |
150℃ | 20〜30分 |
(7) ウレタン樹脂塗料用シンナー
ウレタン樹脂塗料には一液形と二液型の塗料がある。
a).一液形ウレタン樹脂塗料
一液形ウレタン塗料は硬化機構から更に三種類に分ける事ができる。
@.油変性形ウレタン樹脂塗料
油変性アルキド樹脂のエステル結合をウレタン結合に置き換えた物でフタル酸の代わ
りにトリレンジイソシアネート(TDI)を用い樹脂化したもので酸化重合型である。
A.湿気硬化形ウレタン樹脂塗料
塗装後、空気中の湿気と反応して硬化する。
きわめて速乾性である。
B.ブロック形ウレタン樹脂塗料
フェノールでトリイソシアネート基をブロック化して保護したものをポリオールと配合したも
ので加熱型である。
| 使用する溶剤 | |
| ウレタン樹脂塗料の種類 | 使 用 す る 溶 剤 |
| 油変性形ウレタン樹脂塗料 | |
| 湿気硬化形ウレタン樹脂塗料 | |
| ブロック形ウレタン樹脂塗料 | |
b).二液形ウレタン樹脂塗料
二液形のものはイソシアネート成分とヒドロキシ成分と別々に容器に入れておき使用前に
二液を混合して使用し反応硬化させる。
| 二液形ウレタン樹脂塗料の使用する溶剤 | |
| 使 用 す る 溶 剤 | |
| 真溶剤 | ケトン、エステル |
| 希釈剤 | 芳香族炭化水素系 |
| アルコール、アセトン、グリコールエーテル等含水溶剤は不適である。 二液形ウレタン塗料は塗装後シンナーが蒸発するにつれてだんだん濃縮されて結合反応は 急激に進行していき、塗膜ははじめに希釈剤を、そして最後には真溶剤も通さなくなる。 したがって、希釈剤が先に蒸発し高沸点の真溶剤が後に残るようにシンナーを設計する必要がある。 |
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(8) ビニール樹脂塗料用シンナー
塩化ビニール、酢酸ビニール、塩化ビニリデンの重合体及びそれらの共重合体の塗料で、
ラッカーと同じように塗料中の溶剤が蒸発することによって塗膜を形成する塗料である。
塩化ビニールの重合体は酢酸ビニール樹脂に比べて耐水性、耐薬品性がよくまた難燃性で
あるが塗料用としては溶けにくい。
酢酸ビニールと共重合させて得られる樹脂は、溶解性があってしかも酢酸ビニールに比べて
堅牢な塗膜の塗料をを作る事ができる。
両成分の配合比は溶解性の関係から塩化ビニール85%、酢酸ビニール15%程度のものが
用いられる。
| ビニール樹脂塗料の使用する溶剤 | |
| 使 用 す る 溶 剤 | |
| 真溶剤 | ケトン、エステル |
| 希釈剤 | 芳香族炭化水素系 |
2. 溶剤の種類、性質及び用途
溶剤の使用目的は塗料の主成分である油脂、樹脂、セルロース誘導体等を均一に溶解して、
流動性を与え塗りやすくし、塗膜の乾燥又は乾燥の補助をして平滑化することである。
溶剤は成分的に炭化水素(脂肪族及び芳香族)系、アルコール系、エステル系、ケトン系、
エーテル系等に区分されるが、セルロース誘導体の真溶剤・助溶剤・希釈剤と区分して用いる
こともある。
(1) トルエン
芳香族炭化水素に属し、合成樹脂塗料の溶剤として用いるほか、ラッカーの希釈剤としても
用いられている。
沸点は110℃で中沸点溶剤である。
(2) キシレン
芳香族炭化水素に属し、各種合成樹脂塗料の主力溶剤である。
沸点はトルエンよりやや高く138℃であり蒸発性はやや遅い。
(3) メチルイソブチルケトン(MIBK)
ケトン系に属し、主にラッカーや塩化ビニル系合成樹脂等の合成樹脂塗料の溶剤である。
ケトン系は他にアセトン、メチルエチルケトン(MEK)等も使う。
沸点は116℃の中沸点である。
(4) イソプロピルアルコール(IPA)
アルコール系に属し、主にラッカーの希釈剤として用いるほか、一部合成樹脂塗料の溶剤
として用いる。
アルコール系は他にエチルアルコール、ブチルアルコール等も用いる。
沸点は82℃の低沸点である。
(5) 酢酸エチル
エステル系に属し、主にラッカー及び一部の合成樹脂塗料にも使われている。
エステル系は、他に酢酸ブチル、酢酸アミル等も用いる。
沸点は82℃の低沸点である。
(6) ミネラルスピリット
脂肪族炭化水素系に属し、沸点が130℃〜180℃の混合型の溶剤で主に油性塗料と
一部の合成樹脂塗料に用いるが、芳香族に比べると溶解力は落ちる。